彼女と旅した一年前のこと

旅行

当時、海外へ移動することは当たり前の感覚だった。

このCovid-19の制限下の今としては、不思議な感覚になる。

物事、タイミングが重要な要素になる。
そう改めて感じる。
もし昨年、旅していなければ、彼女の夢を二度と叶えることはできなかっただろうから。

ひとりのフライト

一年前、ちょうど年号が決まった頃、僕は北欧へのフライト中だった。

彼女がいれば長時間のフライトも、話しをしたりして楽しいものになるだろう。そしてあっという間に目的地に到着するのだろう。

彼女とは移動時間も楽しめる。いつまでも話していられるから。

しかし、独りのフライト、耐えなければならない。約12時間のフライト。彼女と旅をしてからは苦痛に感じられてしまう。

眠るしかない、
ワインを口に含み、体に染み込ませるようにして、ブランケットに包まる。

W不倫中の彼女と海外旅行

彼女との旅行のきっかけ

彼女と出会い、3ヶ月くらいした頃に、
彼女は僕に伝えてきた
「この国に、ずっと行ってみたいと思っていたの」と。

それはアジアにある小国。馴染みのない国だった。

彼女は海外旅行が好きだ。
学生の頃から様々な国を旅して来ている。

結婚生活、そして子育て生活の中でも、なんとかして海外旅行に出掛けていた。
彼女の心のバランスを保つためのことだったのだろうと今は思う。

「ずっと行きたいと思って、機会を伺ってきたの」
「でもなかなか子供を連れて行くこともできないし、一緒に行ってくれる友達もいなくて」

「ここの国へ行くのが夢なんだー。いつか行ってみたいの」

「でもね、経済発展の影響で、昔ながらの良さが消え掛けてると言われているの。あと一年くらいで変わってしまうのではないかとね」

「そうなんだ…」と僕は答える。

そして、夢か…、と頭の中で考える。

少し頭の中で纏めてから、間を置いて、僕は彼女に伝えた。

「じゃあ、行こうか、一緒に」

彼女は目を丸くして、僕を見つめる。
「え、本気で言ってるの⁈」

「うん」と僕は答える。
「夢だったのでしょう?」「そして今しかないのでしょう?」「ならば行くしかないじゃない」と。

彼女は、「嬉しい」「ありがとう」と僕にいう。

僕は、スマホに目を落とし、自分のスケジュールを確認する。

この国を旅するならば一週間程度の期間が必要になるはず。

彼女も子供がいる…お母さんだ。
そうすると、春休みしかないか…。

僕はその時期、海外への出張予定が、度々入っている。ダメかな。

いや待てよ…、
海外出張から帰って、その翌日くらいに出発すればスケジュールを組めないことはないか。
新たな仕事が入れば成り立たなくなる可能性はあるが、組めないことはない、ここしかないな。と。

そして、目を上げて、彼女に伝える。
「この日程なら行けるよ」とスケジュールを提示する。

彼女はまた驚きながら、
「本気なの?」
「そのスケジュール、あと2ヶ月もないじゃない!」

「行きたかったのでしょう?ずっと」
「なら、行くしかない」と僕は繰り返し答える。

「嬉しいよ、そんなこと言ってくれて」
「でも、仕事、大丈夫なの?」と彼女。

「旅先で仕事する時もあると思うけれど、それでもよければ」と僕は答える。

「…わかった、少し考えさせて」と彼女。

二人でフライトを予約する

一週間後…
二人別々に航空会社の予約画面を開き、予約を一つずつ同じように進める。
この関係、二人連れでまとめて予約を取るのは危険だから。

そして、最後の予約確定画面の所で、指を止める。 

彼女は僕を見て言う。「本当に大丈夫なの?」「無理してない?」
「このチケット、キャンセルできないチケットだよ。」
「この旅の予約後に、海外出張とか、外せない仕事とか入らない?」
「もう引き返せないよ」「本当にいいの?」

僕は答える
「大丈夫」「僕も君となら行ってみたい」
「なんとかなるし、もしその時には、なんとかする」
「君こそ大丈夫なの?」

彼女は、
「大丈夫」
「こういう関係に踏み出す前から、パートナーと一緒に海外に行けたらいいなと思っていたの」
「ただ、想像していたよりも早くその時がきて、正直驚いてるの」
「だって、まだあなたと出会って3ヶ月しか経っていないから」と。

「本当にいいのね」と僕の目を見て確認をする。
僕は肯く。

「緊張するー!」彼女は声に出し、そして、ふたり同時に予約確定ボタンをクリックした。

予約完了。と表示される。

「あー!予約しちゃったー!」「ちゃんと取れた?」と彼女は声を上げる。

「さあ、今度は飛行機、隣同士の席を確保するよ」と、彼女に声を掛ける。

「ここがいいかなぁ?」「こっちがいいか?」
彼女は生き生きとした目で、飛行機のシートマップを追いかけていた。

ただ、数週間後、恐れていたことが発生する。
旅行に出発する2週間くらい前に、急遽、海外出張が入ってきた。

なんとかして、旅に重ならないよう、顧客と調整する。

彼女との旅行の翌日に、フライトとする形で顧客とスケジュールを落とし込む。

何かしらのトラブルがどこかで発生すれば、総崩れするスケジュールだった。

彼女は僕の体調を心配していた。
「欧州へ行った後、私とアジアを旅して、今度は北欧へ戻る。あなたの体が心配だよ」
「無理させてない?」と。

僕は「大丈夫だよ、慣れてるから」
「ありがとうね。君と旅を実現するように気をつけるね」と伝える。
「ごめんね」と彼女。

彼女との旅

結局、体調も崩さずに前半の欧州出張も無事に終え、彼女との旅も楽しむことができた。

彼女と出会わなければ、人生の中で行くことのなかった国。

日々の慌ただしさから離れ、彼女と僕は同じ波長で異国に触れる。

無理することなく二人で自然に旅をする。

同じように感じ、同じように思い、同じようにしたいと思う。

常に手を繋ぎながら旅する。

生きていることを実感する、満たされた時間だった。

彼女との旅を終え、北欧へ

思い出に浸りながら

先日は彼女が隣のシートに座っていた。
でも今は一人。
少し寂しいけれど、彼女と過ごした満たされた思い出に浸る。

体内時計は、様々な国の時差で、なんだかわからないことになっているけれど、満たされた気持ちが心を落ち着かせ眠気を誘ってくる。

ブランケットに包まりながら少しずつ眠りに落ちていく。

周囲が少しずつ慌ただしくなり目を覚ます。
飛行機はまもなくコペンハーゲン空港に到着しようとしていた。
これから北欧の国々で仕事をする。

新年号

飛行機を降りれば、ローミングが立ち上がり通信が確立する。

コペンハーゲンは午後2時過ぎ、日本は夜の9時台た。
僕は彼女にメッセージを送る。
「コペンハーゲンに着いたよ」と。

彼女からは、すぐにメッセージが返ってくる。
「まもなくかな?って待っていたの」
「無事に着いてよかった。お疲れ様」

「ねぇ、年号、何になったと思う?」

「何になったの?」と僕は返す。

「令和だよ、れいわ」と彼女。

新年号は彼女から知らされた。
これも思い出として記憶に残るだろう。

コメント

  1. […] […]

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