
彼女と体の関係に至るまで
今まで僕は、講習や仕事の関係で、女性と二人きりで食事をする機会が何度かあった。
もしかすると、その時点で遊んでいると思われるかもしれない。
でも、外を知りたい気持ちがあった。
自分の置かれている環境はどうなのだろう、他の夫婦はどんな人生を送っているのだろうと、相対的な自分の位置を知りたくなっていたのかもしれない。
食事をする関係の女性の中には、僕に好意を感じてくれる人もいた。
でも結婚しているし、それ以上へ進展しないように距離を保ってきた。
相手に失礼にならないように、恥ずかしいことをしてしまったと思われないように、今迄築いてきた関係を壊すことにもなると思っていたから。
でも、僕はまだ会うのは2回目だったけど、今の彼女をホテルに連れて行った。
今の彼女には僕とは別に関係を持っている男性の影を感じていた。僕と出会ってからしばらく経ってももね。
だから、僕と彼女との関係を決定的なものにしたかったんだと思う。
体の関係になるということは、飛び込むようなもの。今まではそうならないように自分をコントロールしてきた。
僕は彼女を想っているのに、彼女は別の男性を想っている…?そう感じていた。
今までに僕のことを想ってくれる既婚女性もいた。その時にはその女性からの想いは受け取らなかったのに、今度は僕からそういう関係に飛び込もうとしている。
今の彼女と深い関係…体の関係に踏み込む直前に思い出したある既婚女性との間に起きた出来事を今日は書こうと思う。
今の彼女にも話していなかった出来事。
ある既婚女性との出来事
食事をしただけだったのに
ある講習で同じグループになった既婚女性と食事に行く流れになったことがあった。
住む地域が近かったことも関係していたと思う。
僕はただ話を聞き、食事をするだけのつもりだった。
でもその女性は、会話が進むにつれて、生き生きとしてくるのがわかった。
いつもと違ってなんだか華やいだ雰囲気をその女性に感じた。
その女性は「今日はなんだか楽しいの」と伝えてきた。
そう思って貰えたのなら良い時間になったのだろう。…そう思いながらも、なんだかその方のいつもより華やいだ雰囲気が僕は気になった。
結婚していると、男性と食事に行くことを許さない旦那さんも意外と多いはず。
だからその女性に聞いてみた。「旦那様は、他の男性と食事に行くことに対して、大丈夫な方なの?」と。
そうするとその女性は、「旦那さんは私のこと全く気にしていないから。興味ないから大丈夫。」と言っていた。
でもその晩。
彼女からにじみ出ていた華やいだ楽し気な雰囲気に、旦那さんも気づいたのだろう。
その女性のLINEから「殺すぞ、ボケ!」というメッセージを受信した。
公衆電話からの着信
一瞬、目が点になった。
でも、その方の旦那さんが、スマホに目を通したのだと、直ぐに理解した。
その女性から、想いを感じるようなLINEも送られてきていたし。
冷静になって考えれば、食事に行っただけであるし、特に問われることを僕はしていない。
その女性とは、仕事上の繋がりも特にないことから何か問題になることはないだろう。
何か動きがあるまでは反応しないでおこうと思った。
ただ、その女性の状況は心配していた。何かよくないことになっていなければいいけれど。なんだか悪いことをしてしまったなと。
数日後、会社から貸与されている携帯に電話が掛かってきた。公衆電話から。
公衆電話?と思いながら、その電話に出る。
その女性からの電話だった。
「変なLINEを私から受信していませんか?」と。どうもその女性は具体的なLINEの内容を知らないようだ。
僕は「実は、殺すぞ、というLINEを受け取りました。それ以降は何もありませんが」と伝える。
「やはりそうですか…、すみません。状況は正しく話してあるので、あなたに危害があることはありません。ご迷惑をお掛けしてすみません」
「ただ、もう一度会って、話しを聞いて貰えないでしょうか?」とその女性は言ってきた。
僕は回答に困ってしまい、沈黙。
すると、「小銭がきれそう、もう10円玉がないの」と言う。
続けて「今日の夜、19:30に××駅の改札に待ってますので、お願いします」と早口で喋り、僕の通勤経路の沿線駅を指定して、電話は切れた。
困ったなと思いながらも、これも責任なのかなと思った。その女性のことも気になったし。
婚外の想い、代償、リスク
スケジュールを調整して仕事を時間までに片付けた。
その女性が指定してきた駅の改札に着く。
指定してきた時間の10分前であったから、改札前のどこかで待つ場所を探そうと周囲を見る。
その女性は既に待っていた。
周囲を警戒しながら、僕に近づいてくる。
「いろいろ、ごめんなさい。駅ビルの中にお茶できる場所あるから、そこでもいいですか?」
話しを聞き始めると衝撃的な内容だった。
その女性の旦那さんは、全く気にしていない素振りをしていたのに、実はとても彼女の行動を気にしていた。
常にこの女性のスマホの中身をチェックしていたらしい。
そういうことはしない人だと思っていたし、また興味もないだろうからと、その女性はスマホにパスロックも掛けずノーガード状態だったそうだ。
また、3年間程セックスレスだった、と話し始める。
だから、つい我慢ができなくて同窓会で出会った男性と体の関係を持ったらしい。好きでもなんでもなく、一時の性欲が満たせればそれで終わりのつもりだったようだ。
でも、その男性は勘違いしたのか、しつこく連絡して来て困っていた。それと同時期に、あの講習会で、帰りに電車が一緒になったのをきっかけに、僕に好意を持ったのだと話してくれた。
体の欲求の余韻も残っていたから…とも。
その一連の出来事は、旦那さんに話すことになったそうだ。
もちろん、あなたが何も関係無いことは理解して貰っているから安心して欲しい。合わせて、もし、あなたに何かすることあれば離婚すると伝えているから、と彼女は言う。
「なぜ、公衆電話から電話をしてきたの?」と僕は疑問を投げかけてみた。
「スマホにGPSを設定されているの。通話の履歴やメッセージの履歴を管理されてしまっている。子ども用のアプリみたいなものを、スマホに入れられてしまったの。解除もパスロックされてできない。だから。」
「今はスマホどうしているの?」と聞くと「隣の駅の駅ビルのロッカーに入れて来たの、そこなら本屋さんに立ち寄っていたとでも、なんとでも言えると思って」
「私が甘かったと思っている。とても悔しい。」
「先日のご飯は本当に楽しかったの。本当はもっと…」そう言って彼女は俯いた。
抜け出したいともがいているようだった。
可哀そうだった。彼女の気持ちもよく分かる。
そして僕のことを想ってくれていることも感じた。
でも、僕は、それ以上のことをしてあげることはできなかった。
僕にはその女性への感情はなかったし、既婚者であるからコントロールもしていたと今は思う。
「最後に会ってくれてありがとう」そう言って彼女は帰っていった。
その後ろ姿を見送りながら、その女性への感情はなかったにしろ、とても悲しい気持ちと、なにもできない無力感を感じて、景色が重く色を失って見えた。気分が悪かった。

今度は僕が求めている滑稽さ
出会い系で知り合った今の彼女と2回目に対面した時、僕は飛び込むことに覚悟を決めた。
あの時の女性との出来事が思い出された。
こうなる関係にならないように断ってきたし、相手に悲しい思いもさせてきたのに、なぜ今僕は自分からその関係を求めにいっているのだろう。
ふと笑ってしまった。その想いは?って。
だけど、このまま飛び込まずに彼女を帰したら、きっと後悔するだろうと僕は感じていた。
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