既婚者同士の関係だけど
当たり前すぎて忘れてしまうこと
いつも傍にいると忘れてしまうことがある。
当たり前と感じていることや、終わりが無いように思えていることは、実は特別だということに。
それに気づかされる出来事が、先日あった。
W不倫という関係ではあるけれど、彼女の存在が、空気のように当たり前になり、大切さに気付けなくなっていた。
彼女を失う直前に気づいた。彼女がいなくなることで、息ができなくなり、もがき苦しむということに。
去っていく彼女
僕が彼女を傷つけ、それに疲れ果てた彼女は、元の場所へ帰ろうとしていた。そう、家庭に。僕たちの関係性は、どんなに愛し合っていても一般的には既婚者同士の不倫なんだ。
だから彼女は、今までの二人の関係を夢だったことにしようとしていた。
彼女は僕の前から去ろうとする時、言っていた。
「夢を見ていたの」、「贅沢な夢を見ていたことにする」と。
「今ならまだ戻れるから」「私はただのお母さんにまだ戻れる」。そう自分に言い聞かせているようだった。
「あなたに会えば、また気持ちが揺らぐから会わない」と言った。
そして、「あなたのこと好きよ」「でも怖いの、もう傷つきたくないの」と。
彼女の気持ちは揺れ動いていた。
「あなたとの未来を想像したら、何を思うと思う?」
「絶望よ」と。
「これからも信頼されない悲しみ、そして寂しさ」だと。
賭け
その頃の彼女の仕事は、閑散期で、家で仕事をすることが多くなっていた。
だから、彼女の仕事の帰り道に、待ち伏せすることもできなかった。
家の場所は知っている、でも、そこに行くことはルール違反だと思っていた。
会えない日が続いた。
彼女は僕にどこで仕事をしているか、分からせないようにしていた。
その様な状況だったけど、その日はなぜか、彼女がいつもの職場で仕事をしている気がした。
僕はここで離れたら後悔すると思った。
だから賭けた。
仕事を何とか調整し、職場を早く出る。
もし彼女が自宅で仕事をしているならば、運が無かったと諦めようと思った。
そしてこの彼女との関係もそういうことなのだろうと思おうと思った。
彼女の帰宅時間、人が多いターミナル駅を進む。
人で溢れるホームに彼女を見つけた。
彼女が乗り込んだ電車に飛び乗る。
そして次の駅で、彼女がいるであろう車両のドアにホームを走り向かい、乗り込んだ。
彼女は目の前にいた。驚いた顔で絶句して僕を見つめる。
それから「なんでここに居るの?」と彼女は言った。
僕は言う「迎えに来た」と。
後日、彼女は言っていた。
「あの日、急遽職場に行くことになったの」と。偶然だったんだ。
二人で歩いていきたい
結局彼女は戻って来てくれた。僕の傍に。
たくさん話し合った。
彼女は「私を大切にして」と言った。彼女を失うことがどんなに恐ろしいことかよくわかった。だから僕は「大切にする」と約束した。
彼女も、相当の覚悟の上でのお別れだったと言う。もう、二人で生きると決めて動き出していたから…だからこうなってしまった以上、夢だと思うしかなかったんだと。
もう一度、二人で歩き出すことができた。
前よりも強く深く、お互いを理解しながら。
離れることはできない。ふたりでひとつなのだと。
僕と彼女は未来を描きながら、もう一度二人で歩き出した。
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コメント
読んでて涙が出ました。
わたしもお二人とおなじ体験を
今しています。いま、葛藤の中にいます。
少し気持ちが落ち着きました。
彼女から、あなたが書いた内容だから、あなたの方が思いが伝わるのでは?とメッセージを貰ったので、僕が返信します。コメントありがとうございます。
彼女と初めて会った日、話しながら歩き、最後に辿り着いた場所が大桟橋でした。そこで二人手も繋がず、でも寄り添うように、様々な思いを抱きながら、みなとみらいの夜景を眺めた。
そして、終わりを迎えようとしていた時も、その大桟橋で今度は一人、誰もいない夜の待合所で、彼女とお別れのメッセージのやり取りを。
原点の場所に行ってみるのも良いかもしれません。思い出にすることも、整理することもできるのではないでしょうか。
ただ、僕は、今、彼女を離したら後悔すると思った。だから可能性に賭けて会いに(迎えに)行きました。