キスには味や香りがあると僕は思う。
彼女も書いていたけれど、いつまででも彼女とはキスを続けていられると思う。

こんな僕が女性のことについて、何か言える立場ではないこと分かっている。
ただ仕事上、わりと女性と接する機会があり、偶然にテーブルの上の一つの書類を、パーソナルスペースを越えて、覗き込むような形になったりする時がある。
そんな時に、その女性の息を近くで感じたり、間近で唇を見るような状態になったりする。(なんか、書いててキモいと自分で感じる…)
何も意識していない状態で、偶然、その様な形になったりする訳なのだけれど。
素敵な女性であり、所作もしなやかでとても魅力的な女性の方だから、一瞬ドキッとする。
でもその女性の息を、偶々感じた時に、なんだろう何かが違う、と感じることがある。それは口の匂いとかではなくて、なにか僕には合わないという違和感だと思う。
そもそも、その女性の方は僕に対して、尚更その様に感じていると思うし。キモいと思っているかもしれない。いや、そもそも、そんな意識すら感じていないだろう。
狭まったパーソナルスペースの距離を、自然を意識しながら僕は元に戻す。
キスした女性は過去にもいた。
でも、今、思い返せば、その味に何かが欠けているという違和感を感じたことを思い出す。
勿論、魅力的な女性であるから、その様な状況になった訳だけれど。でも何かが足りないと。
彼女の唾液は甘く感じられる。
だから、ただただ舌を絡め、唇を舐め、舌を吸い差し込み合う。
合う合わないなんて、当たり前のことでしょ。と思われるかもしれない。
だから調べてみた。
キスの味は、口の中の細菌やバクテリアが関係しているみたいだ。
その味を、キスをしながら本能で感じ取り、相性の良い相手を見つけるそうだ。
女性は、男性とキスをする時、自分が持っているものとは違う免疫抗体を持っている人を本能で選ぶ。男性は、女性の唾液の中に含まれるエストロゲンという女性ホルモンが多い相手を選ぶ傾向があるそうだ。
キスの時に、なんとなく違和感を感じたりするのは、そういう本能の部分で、相性を感じているからなのかもしれない。
彼女は僕の匂いについて書いているけれど、
それは偶々、僕の匂いに彼女が臭さを感じないだけなのかもしれない。

逆に彼女の部分を、僕が舐めようとすると、彼女は、「臭いし汚いからやめて」と言う。本当は舐めて欲しいのにね。
だから、その言葉が聞こえなかった様に彼女の部分を口に含み、顔を埋める。僕には全くそんな風には感じないから。
彼女が急性虫垂炎になり、強い抗生物質を服用した後、確かに彼女の匂いは変わったかもしれない。

だから彼女は、前と匂いが変わってしまったと嘆き、僕が舐めようとすることに抵抗を感じているようだ。
僕は彼女を抱きしめ繋がる。両手で彼女の耳を塞ぎ、他の音が聞こえないようにしながら、舌を絡めキスをする。お互いが溶け合うようにね。いつまでも。